ふるふる図書館


069



 夜になると、ハルとアキのために編み棒を操る。
 ようやく手袋の編み方をおぼえた。
 どれにしようか毛糸をあれこれ迷うのは楽しみのひとつだ。
 ハルのは水色、アキのは紺色を選んだ。
 アキには紺色が似合う。
 子供のころ、傷跡を隠すために着けていた手袋と同じ色。
 夏になるとさすがに手袋はしなくなったが、ずいぶん暑くなるまでアキは長袖を着て、肌を見せるのを避けていた。
 一目ずつ編み棒で毛糸をすくっていると、過去の記憶は逆にするするとゆるやかにほどけ出していく。
 それらを再び編みこんでいく。
 きつすぎないよう、ゆるすぎないよう、一定の力の加減とリズムをもって。丁寧に。
 もうすぐ、クリスマス。
 なんとか間に合いそうだ。

20060531, 20141006
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