ふるふる図書館


013



 永遠なんてないと思うのに、永遠に思える責め苦の時間。
「なるほどね、やまんばの子はやまんばってわけだ。人を喰らう妖怪だな、まさに」
 私の表情がわずかに歪むのを確認して、満悦の笑みを浮かべ、声はなおも言う。
「伝説では、やまんばになるのは遊女だというじゃないか。つまりおまえたちは、やまんばでも遊女でもあるってわけだ。
『山姥』という能もある。そこには、山姥と呼ばれている遊女のほかに、ほんとうの山姥も出てくる。それは大自然の化身というべきものなんだろうな。永遠に人におそれられ、遠ざけられ、けっして理解してもらえない存在さ。
 ふふふ、ますますぴったりだな」
 私はまぶたを閉じた。嘲りや蔑みに平静でいると、たいがいのおとなは手をあげる。痛みを与えられれば、どんなにこらえても私の顔はこわばったりしかめられたりするし、声を漏らしたりもする。
 その様子を見て、相手は気をよくする。
 しかし、このおとなはちがった。
 呪縛をかけたのだ。
 私は人を喰らい続ける鬼。
 私はさすらい続ける遊子。
 私は色を売り続ける娼妓。
 私は誰も近寄ることのない怪異。
 私は異端の化け物。

20060419, 20141006
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