ふるふる図書館


第8話 プラトニックにいきたい。2



 自宅の最寄駅で降りた。俺も涼平も同じ駅を使っている。涼平が誘った。
「ね、よかったらちょっとだけお茶してかない? て言っても、ミニストップでだけど」
 さびれて辺鄙な地にマックだとかスタバだとかそんなものは残念ながらない。俺たちはコンビニに入って適当に飲み物を買った。店内にはカウンター席になってるところとテーブル席になってるところがあるが、テーブルにした。店内はガラガラで、ほかに利用客もいないからゆったり使える。
「コウちゃん疲れてる? 大丈夫?」
「平気平気。頑丈なだけが取柄だからさ。涼平のほうが大変なんじゃね? 俺なんて小遣い稼ぎにバイトやってるだけだもん」
「あまり無理しちゃ駄目だよ」
 うわっ。なんて親切なんだろ。情けがせつせつと身にしみて涙が出そうだ。そーだ俺はこーゆー交流に飢えてたんだ!
 でもまだ涼平の記憶がさっぱり取り戻せない。涼平のこの態度からすると、ほんとはものすごく仲よしだったんじゃねえのか?
「ごめん」
 俺は謝った。
「ん?」
 涼平が目をしばたいて首をかしげる。ああ、なんて若者らしい新鮮なリアクション。
「俺、涼平のこと全然おぼえてないし、がんばっても思い出せない。涼平は、どうして俺のことわかったんだ? 店で十一年ぶりに俺の顔を見て、それでなんで」
 涼平は目を伏せた。ついでにゆっくりうつむいた。しまった。俺、涼平を傷つけてる? 俺を表すのにふさわしいことわざ栄えあるナンバーワンに輝くのはきっとあれだ。口は災いのもと。夕日を隣で見てるだけでよかったのになあ。とここで宇多田ヒカルの「COLORS」を口ずさんでも仕方ない。
 俺より一足早く涼平が言った。
「ごめん」
「へ?」
 なんで涼平が謝るんだ?
「あれ、うそなんだ」
 なぬう。もしややっぱりなりすまし詐欺?
「だますなんてよくないよね。ほんとのこと話すから。怒らないで聞いて」

20060721
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