ふるふる図書館


第四部

座談会(四)



知世 はい、この話もようやくここまで来ましたね。次回で完結です。ご声援よろしくお願いいたします。
季耶 ということで、そろそろあれやりましょうよ。
知世 あれって?
季耶 輝け! 第一回「総天然色桜少年」衝撃の裏話暴露大会! ひゅうひゅう!
  自己満足で終わる危険性がきわめて高いぞ。すべったらかなり痛い。目もあてられん。
季耶 ここまで読んでくださっているかたなら、あたたかく迎えてくれますよ、きっと。まず、手はじめに、森川先輩の名前からですね。
知世 いきなりおれなの?
季耶 そうです。第一部の第一話が最初に書かれたときは、ちゃんと男らしい名前だったんですってね。でも、第二話のなりゆきで女の子っぽいキャラクターになってしまったので、改名したという裏話です。
  たしかに、冒頭の話では、森川が女の子らしいとにおわせる描写はないよな。
季耶 先輩が女の子になってしまったことで、話がここまでの展開をみせるんだから、いやはやわからないものです。
知世 いや、おれ男だから。女の子になってないから。
  じゃ、次は滝沢の話。といっても兄のほう。
知世 「ときや」って名前を考えたあと、だじゃれで、「あきや」という名前をセットで思いついたんだよね。それで、その名前のお兄さんを登場させようと。でも、なぜか双子になってたと。
季耶 ゆーりんがおれたち兄弟と幼なじみっていうのも、気づいたらそうなっていたそうです。
  綾小路兄弟とおれの関係もいつのまにそうなっていたとか。つじつま合わせの埋め合わせのためだけに、話が長くなってるわけだな。
知世 それは伏線っていってほしいんじゃないの? 作者としては。
  滝沢の苗字の由来は談話室ではないんだな。
知世 作者は、第一部だけを作った時点で、周囲に読んでいただいたんだよね。で、複数のひとから寄せられた感想というか印象が、「美少年ばかり出てくる」だったそうで。かなり意外に感じたんだって。
  容姿がいいと明記していたのは、おれと飛鳥瑞樹だけ。森川は可愛いという表現をしていた。これは、はっきり言って美形じゃないからな。
知世 ほんとにはっきり言うね、お前……。
  主要人物以外は特筆するほどきわだった外見だという設定はしていなかった。もっとも、舞台は九〇年代はじめの、さほど都会でもない高校だ、二一世紀みたいにおしゃれにいそしむ男子高校生ってのは存在してなかったから、ほんのわずかの美形をのぞけば、ごくふつう、あるいはそれ以下の男子ばかりというわけだな。
知世 容赦ないなあ。
  だからせめてと思って、容色のすぐれた有名芸能人の男子の苗字を滝沢につけた、ということだ。
季耶 美少年ばかり出てくる話という意図でつくったわけではなかったってことですよね。
  だが、あまりに「美少年ばかり」と言われたので、方針を変える作戦に出たんだな。やけっぱちというべきか、自暴自棄というべきか。
知世 ちょっとやりすぎな感はいなめないよね。
季耶 あそうそう、小園深晴については、客観視した描写がないんですよ。だから、彼が美形か否かという判断は読んだかたにおまかせします。
さっきもちらりと出ましたが、九〇年代はじめなんですよね。そうとう昔の話なんですね。携帯電話もインターネットも一般高校生にははるか遠いものでした。
知世 そのころって、平日に街をふらふらしている高校生って少なかったよ。だから春日みたいなやつは異質だったんだね。
  で、髪を茶色にする高校生もいなかったから、森川のような存在がめだったわけだ。
知世 で、帰国子女もそれほどたくさんでなかったから、瑞樹君はめずらしいんだよね。で、(季耶を見る)…………。
知世 (季耶を見る)…………。
瑞樹 (季耶を見る)…………。
季耶 なんです、三人そろって! どうせおれは平々凡々のありふれた男の子ですようだ!
知世 そうだよなあ、この中で唯一深刻な過去を背負ってない。いいなあ。
  こういう人間も必要だな。むやみに明朗快活で、何も考えてない能天気。
季耶 まさかフォローじゃないですよねそれ。
知世 本来この話がめざしていたものが、ひたすら明るく前向き能天気っていうことなんだよ。なのに、どうしてもネガティブな部分を書いて失敗しちゃったんだ。だからね、滝沢君の存在はたいへんに重要なんだよ。ほら、落ちこまないでさ。おれのわらびもち、わけたげるから。
瑞樹 そんなこんなで、おひらき。
知世 そうだね。ではまた、第五部でお会いしましょう。
瑞樹 Don't miss it !
季耶 はっ。ここで飛鳥君が英語を使っていたのは、もしや伏線?
  それはない。

20050428
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