ふるふる図書館


あとがき




photo:mizutama

 最後まで読んでくださり、どうもありがとうございます。
 今まで発表してきた作品と、多少毛色がことなっているかもしれません。
「幸福な本棚」を公開するにあたり、いろいろと考えました。
 ほんとうは、出さないほうがいいのかもしれないとも悩みました。
 迷いながら書いたから、かなり中途半端な文章になっていると思います。
「やっぱり出そう」と最終的に決断したのは、さんざんためらっていた理由と一緒です。
 それは、性的な暴力についてです。
 このことに関しては、とかく誤解がついて回りがちです。
 作中でも触れていますが、夜道をひとりで歩いていたらまったく知らない人に襲われて、暴行を受けるというようなケースだけが強姦だという固定観念が、いまだにまかりとおっているのではないかと思えます。
 実際には、知人に室内で被害にあうという事例が多いのです。
 相手が知人であれば、ことを荒立てたくない、自分ががまんすればすむのだという心理がはたらくのは想像にかたくありません。
 そうすれば裏切られたという思いも、その場ではおさえつけることができるかもしれません。もちろん、一時的な、表面上だけのものにすぎませんが。
 いやなら、徹底的に暴れて抵抗すればいい、できないのは、どこかで受け入れる気持ちになっているからだ。断れない、という心情が理解できない、というのは、性別に関係ないもののようです。というのは、あまりに軽く受け止めている人に、男女問わず出会ったからです。
 同じ被害者でも、考えかた、感じかた、とらえかたは千差万別です。
 この小説の主人公のように、たとえ深刻なダメージを受けているようには見えなくとも、人生が大きく変わってしまうこともあるのだということを、知ってほしいと思います。
 いやがっているように見えなかった、とか、好きだから、などという理由があったにしても、同意がなければ暴行に変わりはありません。
 ためらう相手を強引に、無理強いしてことに及ぶ、というフィクションは、あるジャンルでは特にめずらしいものではありません。
 その行為が、結果的にハッピーエンドにつながる小説も多いことでしょう。現実の世界でも幸せになれればいいのですが、ままならないものです。
 作品で、うまく伝えられたという自信がありません。
 でも、ほんとうは、ずっとずっと誰かに伝えたくてしかたなかったことなのかもしれません。
 だから珍しく、あとがきというものを添えてみました。
 むしろ弁解ですので、あまり長々と書いてはさらに興をそぐことでしょう。
 このあたりで終わりにします。

 感謝をこめて。さようなら。

20051225, 20080504
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