ふるふる図書館


第3話 ギブ・ミー・アップ give me up 2



「ねーねーどーなの?」
 前言撤回! やっぱ自分のことつっつかれんの苦手。しかも、迫ってくるのは独特な色合いの目をお星さまのようにキラキラ輝かせてる木下さん。二十七にもなってなんだこの無邪気っぷり。ありえねえ。あーうざいよもうっ。
「告ったことも告られたことも、いまだかつて一度たりともあ、り、ま、せ、んっ!」
「ほほー。じゃあ俺が一番乗りしちゃおっかな?」
「い、り、ま、せ、んっ!」
「うっわー。即答かよ。見事にふられた。ばっさり斬られた。なんと冷たい子なんだお前……」
 わざとらしく顔をおおってよよと泣き崩れるふりをする。俺はじとっとした視線を相手に注いだ。
「もしかして俺を一晩中いじめ倒すために宿を取ったんじゃないでしょーね?」
「きゃっ。一晩中? いじめ? いやんアダルト発言」
「変なしなを作んないでくださいよ」
 枕をつかむと胸にかかえた。緩衝材になったり凶器になったり癒しアイテムになったり、大活躍だ。
「抱きしめるもの、まちがってね?」
 木下さんは俺になんと言われようともめげる気配がない。俺は腕にぎゅっと力をこめて、枕にあごをうずめた。
「拗ねるなよお。ここに泊まったのはさ、ただ、お前とずっといたかっただけだからさ」
「そんなの木下さんちでもいーじゃないですか。それをわざわざ、高級ホテルを予約してまで?」
「たまにはいいだろ。気分も変わるし」
 俺はいよいよ本格的に、顔をどっぷりと枕に押し当てた。
「こらこら。だーかーらあ、相手まちがってるって」
「ひのひははん」
「あん? 枕を離さないと聞こえないぞ」
 俺はぷるぷると首を振る。ほんの少し顔を浮かせて、枕に向かって質問する。
「木下さん。俺、冷たいですか」
「うん。冷たい」
 自分で聞いておきながらちょっとぐっさり。
「直します。だから教えてください。どこを改善すればいいですか」

20080721
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