062
私を押さえつけている私は、力が強い。子供のせいか、自分の思いどおりにならないものを排除することにかけては容赦も躊躇もない。
幼い私が眠っている隙に、私はこっそり計画を立てる。
いちばんいい方法は、私がかつてのおとなの私に戻ることだ。
そうすれば、ハルとナツも私の世話にわずらわされずにすむ。
でも私がアキになったら、アキは醜い人間になる。ハルとナツを汚してしまう。
だから、さようならをしよう。
黙って消えたりしないと約束をした。それなら少しずつ、それとなくふたりの視界からはずれていけばいい。でも、ハルとナツに通用するだろうか。
そうだ、どこか遠いところで働こう。たぶんうまくいく。もう二度と会わないでいれば、ふたりとも、私を忘れてくれる。
あるいは、うんと嫌われるようにしようか。
私の醜さを突きつけてみせても、ふたりは思いやりをもって接してくるかもしれない。
これ以上、ハルやナツと一緒にいたくないんだってきっぱり言って、手ひどく傷つけて、背を向けて。何か言われても、徹底的に無視して。
そこまですれば、いくら心の広いふたりでも、断ち切ってくれるはずだ。
私がいなければ、ふたりは幸せになれるのだ。
ふたりのためを思って、ふたりにひどい仕打ちをする。
別れなくちゃいけない。
大好きだから。
私は奥歯を食いしばった。そうしないと、嗚咽をもらしそうだった。
毛布をかぶった。
寝室にハルが入ってきた気配を感じて、じっと寝たふりをした。
ハルの手が私のかけぶとんをそっとなおして、上から軽くぽんぽんと叩いた。
そのしぐさがやさしくて、あたたかくて、私は血がにじむほど唇に歯を立ててこらえなくてはならなかった。
もう少しだけ、もう少しだけ、そばにいさせて。
決心がついたら、きっとすぐに、いなくなるから。