ふるふる図書館


名前の花



 おまえには、花と同じ名前をつけたと
 以前に母は申しました
 ですが、何の花だかわからないのです
 薔薇だか、蘭だか、皐だか

 それはそれは美しい、皐の花から名を取ったと
 以前に母は申しました
 ですが、調べても調べてもわからないのです
 百合だか、菊だか、桜だか

 母の思いちがいでしょうか
 それとも、実在するのでしょうか

 自分と同じ名を持つ花を探し出し
 その美しさにこの目でふれたい気も致します
    ならば、母の願いをこめた一輪の花のために
    生涯をついやすことになるかもしれず

 夢とまぼろしの象徴として
 胸の中に自由に咲き誇らせてやりたい気も致します
    ならば、決して消えることのない一輪の花とともに
    生涯をおくることになるかもしれず

 求めつづけて
 花がほんとうにあったとして

 あこがれが
 かかえきれないほどふくらみ、花ひらいた後で
 ほんとうの姿を見ることに、耐えられるでしょうか

 あこがれは
 つかんだとたんに色あせるものと
 それが世の常と申しますから

20050820
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