ふるふる図書館


紫陽花



 濡れそぼった身をわたしはふるわせる。
 冷たいのでも寒いのでもない。
 あたたかくてやさしいしずくが降る。
 夜な夜なあなたの雨に打たれて。
 よろこびのあまりわたしの花は恥ずかしげにおののき、すすり泣く。
 あなたの指で手折られて、あなたの腕におさまる花。
 あなたの中で、わたしの知らなかったわたしが息づき、喘ぎ、目をさます。

 一雨ごとに彩られ、あでやかに変化していく花。
 わたしはあじさいだ。

 甘い香りも蜜もない。虫さえよりつかない。
 愛してくれるのは、降りそそぐ雨だけ。
 わたしを色づかせ、染め上げるのも。
 あなただけ。

20060619
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