第14話 アポイントメントはたたかい。1
嬉しかったり、楽しかったり。そんなときに誰かにメールしたくなると、真っ先に木下さんを思うのはなんでなんだろう。
木下さんは、酒をきこしめしてできあがってるときに俺に浮かれたメールをくれるけど、それはいい気分を俺と分かち合いたいって思ってくれてんのかな。
ああちがう、お調子者のあの人のことだから、手あたり次第メールしまくってんだろ。俺に最初にメールしてるわけじゃない、きっとそーだ。うん。
だけどたまには俺からメールしてもいいよな。でも、なんて?
「件名、桜田です。
本文、こんばんは、木下さん。俺、バイトを増やすかもしれなくなりました」
うーん。相も変わらずそのまんまだ。顔文字でもつけようかと考えたけど、うまく選べずそのまま送信。
しばらくたつと携帯のランプが派手に光った。こんな早く返信をよこすなんて暇だったんだろか。
木下さんからの着信だけ、七色に点灯するように設定されている。もちろん、俺のしわざじゃない。涼平とメアド交換するまで木下さんしか俺の携帯に電話なりメールなりしてくる人がいなかったから、ちっとも気づかなかった。設定を変えるやりかたもようわからんので、そのままだ。
そんなおちゃめ変人からのメールをひらいてみる。
「件名、大丈夫か?
本文、うちのシフトきつきつだろ。無理するなよ~(T_T)もしかして小遣いがたりないのか? うちの時給安すぎか? いつから新しいのやるの? どんなバイト?」
こんな短時間で、よくこれだけの文字が打てるなあと感心した。顔文字まで入れて。
四つも質問が入ってる。それに答えなくちゃと俺はまたせっせとボタンをかちかち押し始めた。こういうちまちまとした作業は苦手だ。疲れる。
ふいに画面が電話の着信に切りかわってそれを阻止した。表示されてる番号と名前は、木下さんのだ。
俺の返事を待つのがじれったくなったのかな。
「もしもし」
「よう。今話せる?」
のんきに弛緩した声がするりと耳に流れてきた。
「はい。平気です」
「なにかしてた?」
「木下さんへのメール打ってました。すみません、俺早くできなくて。待ちくたびれちゃったんですか?」
「あー。もしかして、遅くて怒られると思ったのか? 直接話したほうがお前が楽だろ、そんだけ。それよりバイトのことだよ。厳しくないか、これ以上増やしたら」
「えっと。まだ、決まったわけじゃないんです」
どうしよう俺、先走りすぎちゃった?